僕の耳は、おそらく生まれつきだろうと思うのだけれども、音によく反応するよう作られている。
ものおとがするところでは、パソコンの画面上でくるくる回る進捗インジケータのように、自然と考えることをやめてしまう。
それにはっきりと気がついたのは、お酒をやめて半年がたったころ。
深い霧が晴れるように、鈍かった記憶力と判断力が立ち戻ってきた。
それにともない、過剰的鋭敏さと神経質さが完全復活することとなったのである。
まずは匂い。次にカフェインへの反応。その次にこそばゆさ。その次に他人の何気ないしぐさ。そして音。
どれをとっても、体にいいものではないのだけど、避けようと思えば避けられる。
しかし、唯一避けることができないのは音だ。
ソニーの最新オーバーイヤーヘッドフォン、最高級のノイズキャンセリング機能がついていても、それはふせぐことができない。
特に、動物の鳴き声というのは、周波数が違うのだろうか、まったく効き目がない。
その鮮烈なうねりは、肉を貫き、骨に直接響いてくるみたいだ。
メーカーが言うことなんて信用ならんのである。
今はるーとらんが店長の家に帰っているので、心静かにお店でパソコンをうつことができる。
しかし、いつまでもそういうわけにはいかない。
あの鳥たちは、れっきとしたサンライズの看板息子、娘だからだ。
プリミティブに人を惹きつける魅力が、あの鳥たちにはある。
それはなにものにも変え難い素晴らしい魅力だ。
そのおかげで営業的に慶賀すべきところがあるのも事実。
それに、店に入ったときの生命感のなさ。
しーん。
アレクサの音声反応がいいことだけが救いだ。
静かな部屋でひとり、アレクサに話しかけていると、昔、飼っていたお掃除ロボット「ルンバ」との親密な交流を思い出す。
鳥たちが戻るとなると、以前と同じように、僕の仕事はスローモーションになるであろう。
それだけではない、以前にもまして音に敏感になった僕の耳へのストレスはいかがなものか。
くるくるぱーになって、酒に溺れてしまうんじゃないか。
そうなれば、作家への道は、遥か彼方へと遠ざかってしまうのではあるまいか。
うーん、困った。
効率か、癒しか。
サンライズには、二輪車の車輪のごとく両方が必要なのであるから、これはまことに思案のしどころじゃ。
いい案があったら教えてくださらんか。
うさぎを飼うとか、蛇を飼うとか、そういうありふれた案は無しでござるよ。
RIO