昨日は、西の風と北の風が同時間的に吹いていたため、中央口以外は全て荒れ模様の辰ノ口へと行ってきました。
僕はというと今日も素潜り講習。
今年は当然のことになりつつあります。
講習生はコンスタントに増え続けていますので、秋になっても終わりません。
なんでこんなに多いんでしょうか。
誰か教えてください。
長崎道の大村ー長崎間が通行止めだったので、大村湾SAで1時間足止めをくらいました。
長いこと車に乗っていたので疲れてしまいました。
太陽が中空に登ったところで器材のセッティングでした。
まずは、フナムシが這い回る岩の上での瞑想からスタートしました。
無神経なフナムシたちはまえださんの顔をこっそり食べようと集団で近づいてきていました。
僕はまえださんが食べられないように、スノーケルを振りかざしてフナムシたちを怖らがせていましたが、一瞬のすきをついて、まえださんの陶器のようにすべすべした首元をかじっていきました。
フナムシは食べれるものならなんだって食べようとしてくる海界屈指の食いしん坊なのです。
キスマークをつけられたとはいえ、どっぷりと瞑想に入ったところでスタティックスタート。
予期せぬ波で体を振られたり、そばで誰かがフィンを履いたり、30m先の水面で声をあげながら講習をしていたりと、決して瞑想に適していた状況ではありませんでしたが、まえださんはまえださんの容れ物のなかにある小さなゆらぎのようなものをコントロールしながら記録を伸ばしていきました。
ついには2分40秒越え、海猿の息止め試験なら合格のところまで到達しました。
素晴らしい。
まだまだ伸びますのでがんばりましょう。
ごはんを食べたら、北口で残りの講習スタート。
海底4mのところに結びつけられたブイを使って体の内部を潜水に慣らす訓練。
浅いところは濁っていました。
底の方では澄んだ水が流れていましたので、思っていたよりも見えていました。
結果的に目標達成でFINISH。
おつかれさまでした。
内省的に過ごす海の旅はスキューバダイビングとは根本的に違います。
あくまで自分の奥に潜るのが素潜りなのです。
次回も見知らぬ発見があることを期待しております。
そういえば、前回の台風で近くの堤防がばらばらにされていました。
道路は、コンクリートの塊で封鎖されていました。
後ろを振り返ると、ほほえみを浮かべる少女がひとり。
ひっそりとたたずんでいました。
片手には携帯電話を固く握りしめ、足元から落ちる薄い影は堤防の切れ端の方まで伸びていました。
彼女は口の両端を少し持ち上げて僕の目をじっと覗きこみました。
その目の奥には簡単にはうち明けてはならない秘密を抱えているように見えましたが、実際には口を真一文字に結んで開くそぶりを見せることはありませんでした。
すると、持っていた携帯電話からピーという発信音が聞こえてきました。
やがてその音は波の音に吸い込まれ、すぐさま一語一語を区切るような電子音でしゃべりだしました。
それはぺッパーくんがしゃべる声にも似ていました。
「あんなインポテンツみたいなふにゃふにゃな堤防で日本の沿岸を守れるわけないでしょ。そんなことインドネシア人にだってわかること。
わたしは日本人がインドネシア人よりも頭がいいなんていっているわけではないの。論点がずれてるわ。
インドネシア人にも賢い人はいるし、日本人にも頭のネジが外れているひとだっているの。もちろんその逆のことだってあるの。
ウサギとカメのどちらか一方が、すべてのものごとにおいて優れているか優れていないなんてことをいってもはじまらないでしょ。
それとおなじことなの。わかるかしら。
これだけ海に囲まれて生活してきたのに、なんでそんな簡単な結論がわからないのかしらと言っているだけ。
あらかじめ決められた予測を立てられないのかしら。あきれちゃうわ。
だから軍艦島だってあのざまよ。いれたての麦茶でも飲んで出直してもらいたいところだわ。
きっと東シナ海を甘くみてるのよ。見てらっしゃい。玄界灘もそのうち甘く見出すわよ。」
それだけ言い終えると、携帯の声はピタッととまり、風の音だけがあたりを彷徨っていました。
すると、少女はくるっと振り返り、堤防の向こう側へと消えていきました。
RIO