連日の知床ダイビングツアーのブログ、村上春樹の短編小説でも読んだような満足感でしたね。
さて、今日からは通常の志賀島の様子をお届けとなります。
これもちゃんと毎日読んでね。
どうも、店長の前田です。
遂にわたしのいちばんすきな季節がやってきました。
水温が上昇をはじめドライスーツからロクハンに衣替えをすます頃。
冬眠から覚めた魚たちが餌を探して泳ぎ回り、繁殖活動が盛んになり海全体が生命のエネルギーに満ちてくる。
年間を通して今の時期の志賀島がいちばんすきなのはそんな強いエネルギーを感じるからでしょう。
スタッフ紹介にも記載してある通り、わたしは捕食行動や繁殖行動などの生態観察、『生』を感じるダイビングがすきなので、この時期の志賀島は時間を忘れてしまいます。
しかし、志賀島人気なし。
6月8日、週末のこの日、白瀬に来たのはこちらのお3方と他1ショップのみ。
経験本数100本を超えるMSDの3名には潜り慣れた海況ではバディダイビングを楽しんでもらうことにしました。
3人でのバディダイビングは2人の時とは違って難易度が上がります。
案の定トラブル発生で、少し怖い思いをしたりしながら貴重な経験ができた様でした。
みんなのナビゲーションスキルや安全管理の意識が向上していることに大変嬉しく、とても感心しました。
安全無きところに楽しみなし。
いつも間にかみんなに自立したダイバーには成長しているんですね。
トラブルの詳細はここには書きませんので、次回会った時に聞いてください。
ちなみにトラブルの原因はこちらのハナイカです。
志賀島でのハナイカはかなり久々です。
万華鏡のようにぐるぐると体色を変化させす姿には目を奪われます。
志賀島の名物ワカメはメカブだけが残り、ホンダワラが群生しています。
今年もアオリイカの産卵ショーが見れるかと思いましたが、とあえずこの日はアオリイカの気配なし。
その代わり今年はコウイカの卵が多いですね。
ハナイカもコウイカだしね。
メカブに住む妖精スナビクニンも探してみましたが、ちょっと時期が遅すぎた感じでした。
見つかるのはミノウミウシばかり。
100株くらい見ましたがゼロでした。
砂地では小さなアカエイなんかも出てきました。
初夏ですね。
沖には増えゆく見慣れないブイたちと、
玄界灘らしくないクロホシイシモチの群れに驚かされました。
あとは、この季節も見どころと言えば、繁殖行動と寄生虫をつけた魚たちではないでしょうか。
懸命に身を寄せ合うタツノオトシゴのペアや、スズメダイの産卵床作りといった産卵行動も真っただ中。
メスのお腹を刺激して卵を産み付けてもらっているそんな瞬間に出会うことも珍しくありません。
これからは卵たちの成長や、それを保護するオスたちの行動観察も楽しいのではないでしょうか。
こちら寄生虫ウミチョウを付けたアナハゼ。
冬の魚たちの活性が低い時期に寄生虫がつき、水温が上がった今の時期は寄生虫がついたまま泳ぐ魚にでくわします。
中でも志賀島では、ベラ科の魚の目の上にリボンの様に寄生するメダマイカリムシとアナハゼやハゼ科に寄生する写真のウミチョウをよく見ることができます。
あとはウミウシに寄生するコペポーダなんかもそうですね。
この寄生虫、自然の中に棲息しているものとしては、ごく当たり前の現象。
魚の場合は野菜のように「薬をまいて寄生虫を駆除する」というような事はできないから、つけたまま普通に生活していくわけですよね。
最近の調査によると食の対象となる海産魚の約200種類からなんらかの寄生虫が発見されてるそうで、単純に天然魚には寄生虫がいて当たり前で、人体に影響を及ぼすものは少なくて、影響を及ぼさない種類の方がはるかに多いんだそう。
しかし私たち人間は文明の進歩によって自然から離れていった存在。
寄生虫を排除する選択を行ってきたので、当然寄生虫は激減しています。
魚においての養殖がまさしくそれで、冷凍餌や人工飼料を与える養殖魚においては天然魚で見られる寄生虫が確認されることはまずありません。
養殖魚には魚と共生する寄生虫ではなく、魚を食い物とする厄介な寄生虫が現れます。
それを駆除する為に、養殖用のいけすに薬を撒き、その清潔な養殖された魚を人間が食べるのです。
生態系もひとたびバランスを崩してしまうと、あっと言う間にどんどん崩れてしまうのではないかと思っています。
何年経っても、ずっと美しい海に潜っていたいものです。
寄生虫もきっと生態のバランスを保とうとする貴重な生物なんだと思っています。
そう思って見れば気持ちの悪い寄生虫も不思議と愛着が湧くものなので、機会があれば是非じっくりと観察してみてください。
では、また明日。