オオカズナギっていうお魚知っていますか?
普通に聞くと日本の神話に出てくる神様みたいな名前ですね。
この魚は「タウエガジ科」という超マイナーな科に分類されています。
初めてみた人は普通のダイナンギンポの親類かなと思うはずです。
磯遊びをする子供からもダイビングをする大人からもあっけなくスルーされる姿形をしています。
これは今日撮ったばかりの「オス」のオオカズナギの写真です。
オスはこのように濃いオレンジ色をしています。
オオカズナギたちが産卵の案件をめぐって闘争を始めるのがちょうど今の時期です。
5月〜6月というのはオオカズナギに限ったことではなく、アオリイカ、スズメダイ、ニジギンポ、ヘビギンポ、ナベカ、オハグロベラ、タツナミガイといったさまざまな生き物たちが、玄界灘という厳しい環境で生命をつないでいく季節でもあります。
オスはメスと二人きりでしっぽりできそうな手頃な広さの巣穴を見つけるとそこに入り込んでメスを待ちます。
しかし、そんな手頃な巣穴は自然界にそうたくさんあるものではありません。
どうしても椅子取りゲーム的な喧嘩になることは避けられません。
その喧嘩の方法はとにかく大口あけて押し合いするというものです。
平常時のオオカズナギの口元を見てみますと、到底大口が開けられるような構造には見えません。
でも、実際はタガが外れたように開くんです。
なんとも不思議な口をしています。
お互いを傷つけあわず、よりよい遺伝子を後世につないでいくためには最適な方法なんでしょうね。
オスの場合、男らしく短期決戦で決着がつきます。
こちらの今日撮られたばかりの写真はメス同士の喧嘩です。
仲良くペアになっているところに厚かましい別のメスがやってきて巣穴をのっとろうとしました。
この喧嘩は女の子らしくといいますか、ねちねちとした睨み合いが続く長期戦になります。
メスは体色が薄くて地味な色をしています。
「なによ!あんたなんかアゴイサムよりもアゴ長いブスなんだから!鏡みたことあんの!」
醜くモテナイ女たちがイケメンとの婚約をめぐって、とったとらないの抗争がぐだぐだと行われます。
まるで、若いイケメンの男性が少ない福岡の恋愛事情の縮図のようです。
なかなか決着がつかないのも仕方がないことだなあと思えてきます。
10分におよぶ喧嘩の末、頭の白いメスが幸福な生活を勝ち取りました。
どうぞお幸せに。
左:ごんたろう(26)
右:ときこ(23)
本日、こちらの希少価値の高い決定的瞬間をカメラにおさめてくれたのは、水中カメラマンのハヤカワタツノリさん29才です。
ハヤカワタツノリさんは経験本数700本のビール好きのPADIダイブマスターで、大学生の時分から伊豆でダイビングを始めて水中写真に没頭してきました。
彼の持ち味は、生物がいそうなところを見つけるたぐいまれなる嗅覚と、マクロな生き物を探し出す粘り強さと、寒さと疲れをものともしないロングダイブです。
今回の撮影も合計200分潜っていました。
僕は次世代の「あべひでき」になれる人物ではないかとひそかに思っています。
個人的には福岡の海でオオカズナギの闘争写真が撮れるなんて思ってもみませんでしたので、これからも彼にはあべひでき的作品を期待したいとおもいます。
RIO