もうしわけがたたないとはいったいどういうことなの?
ふじこは半分くらいお茶の入ったペットボトルの蓋をひねりながら足元にいるうさぎに目を落とした。
そのうさぎは大型犬が散歩のストライキでもするかのように座り込んでいた。
睡眠。
うさぎの両目は等しく開いていた。
うさぎの意識はうさぎの意識の内奥を滔々とながれているように見えた。
うさぎは寝ていなくても寝ているふりをしたり、寝ていても寝ていないふりをするのがうまいことをふじこは知っている。
うさぎが起きているのか寝ているのかを確かめるため、ふじこはうさぎの耳を小さく引っ張ってみた。
お茶をかけてもよかったのだが、寝ているうさぎにお茶をかけるような野暮なことはしない。
耳を引っ張られたうさぎは鼻先をぴくりと動かすが、目の大きさは1mmも変化しなかった。
変化させる必要がないといわんばかりに。
繁殖と警戒で命を繋いできたうさぎはふじこを敵ではないと事前に嗅ぎとっていた。
うさぎは元いた地点に意識を戻し、脈拍が下がり意識が遠のく患者のように鼻先の動きを止める。
うさぎは誰がいてもこともなげに鼻の先を動かす動物。
ぴくぴく。
ためらいというものがない。
動かす必要があるときにだけ必要な分を動かす。
ふじこはそんなうさぎが好きだった。
ふじこはうさぎのことを思うといつもそのことばかりが頭に浮かぶ。
それから決まってマイルドセブンのきつい煙を肺の奥に流し込みたくなる。
そんなことをさせるのはうさぎにとっては朝飯前のことなのだ。
あいにくマイルドセブンは切らしていた。
マッチの箱には必要十二分なマッチが入っているというのにだ。
マイルドセブンの煙じゃなくてもいいから空気を吸い込みたい。
ふじこがそう強く思うとうさぎの鼻先がぴくりと動いた。
ふじこの鼻先もぴくりと動いた。
「やっぱりそういうことなのよね。あなたはいつだってわたしをそんな気持ちにさせるんだから」
ぴょんぴょん🐰
うさぎスポット5
「発電所跡前」
ここでは1羽のうさぎが駆け寄ってきた。
ここは人が少ないからなかなかエサにありつけないから大変だろうな。
そのかわり敵はいないだろうけど。
そして、ちゃんとあばらが見えるうさ。
食いしん坊レオくんはあばら見えませんww
島に一個しかない小さな山に向かう。
目指すはひょっこり展望台。
途中、貯水槽みたいなのがあった。
山ガールガチ勢のラムちゃんに貯水槽の中をGOPROで撮ってもらうことにした。
「え〜!水の中でシカとか死んでたらどうするんですか?見たくないですよ〜!」
GOPROで撮影した映像を切り抜いた写真がこちら。
「コンクリートの蓋」
ラムの取り越し苦労でした。
ラムによくありがちな出来事。
さらに上を目指す。
発電所跡地以降はうさぎ出てこなかったけど、たらいに入った飲み水が置かれていたから、上の方までうさぎはくるんだろうね。
うさぎの冬は陸。うさぎの夏は山だと思う。
とにかくうさぎは暑いの嫌いだから。
ひょっこり展望台。
まあるい小島とまっすぐな鉄塔が見える。
ここは一体どこなんだ。
うさぎがいないから早々におりる。
スニーカーではちょっと厳しい山道が続く。
よっぴー肉離れ坂道。
山を降りていると、どこにいっているのかわからなくなってしまった。
方向感覚がたびたび失われる島。
それが🐰島。
山道に入ると、うさぎが2羽かけよってきた。
「ねえねえ、ちょっくらぼくらにもえさをわけてもらえないかな?お腹が空いちまっているんだ」
おとぎ話みたいな話。
こっちのうさぎは「やまこ」と名付けた。
こっちのうさぎは「うみこ」と名付けた。
人里離れたところに住んでいるうみことやまこは通りすぎる人間の匂いを遠くからでも嗅ぎとっている。
そして、人が通ると必ずこう言う。
「ねえねえ、ちょっくらぼくらにもえさをわけてもらえないかな?お腹が空いちまっているんだ」
そう言われたらあげざるを得ない。
ここで素通りできる人間はそういない。
みなさんも大久野島の山に入るときはうさぎのエサを持っていってください。
うさぎを神話やおとぎ話に出演させたくなる理由がわかるよね。
うさぎスポット6
「毒ガス貯蔵庫跡地」
ここの群れはなかなか大きい。
フェンスの向こうは瀬戸内海。
海沿いを左に7分歩けば休暇村です。
この時点でエサは半分以上残っていたね。
うさぎスポット7
「三軒屋毒ガス貯蔵庫跡地」
貯蔵庫の中から飛び出してきたうさぎ。
休暇村に近いからお風呂場からでも見える。
夜中もここで休んでいるよ。
鼻が長いね。
休暇村のグラウンドにかえってきた。
日が暮れかかってしまった。
からだも冷え切ってしまった。
朝顔のスカートに隠れる子うさぎ。
寒いんだね。
子ウサギに夕焼けは絶好のシャッターチャンス。
落ち葉のもぐもぐグッタイム。
よく噛んでグッタイム。
激戦区のうさぎたち。
負傷兵も多い。
真ん中のうさぎは頭がかたむいたまんま。
レオくんはこんなところに住めないね。
あばらがスリムなうさぎさんに一瞬でやられちゃうよ。
喧嘩の準備にも余念がないうさぎさんたち。
うんこちらばり夕日映え。
さよなら初日。
さよなら俺のうさぎ。
休暇村には浴場が2つあった。
「小沓の湯」「大沓の湯」
個人的にはちいさい方の小沓の湯がおすすめ。
夕飯のバイキングは、ちいさいハンバーグとか冷凍の餃子とかレトルトのカレーとかしかないんだろうなって思っていたら、
新鮮な寿司や刺身やタコさんが食べ放題。
しゃぶしゃぶの豚肉もおいしかった。
そのほかのおかずも美味かったから、ホテルのトータル点数90点です。
大久野島の宿泊施設はここしかないしこれだけレベル高いんだから年末年始は予約とれないの普通か。
夕飯のあとに、ウミホタルの観察会を見ました。
「はい〜。こちらウミホタルとしていいまして甲殻類の一種でございます。みなさんご存知ありますでしょうか?」
この方かなりの生物おたく。喋り方もおたく。
たつぼう感がぷんぷんしてた。
ていうか、海で見るのかとおもったら、コップの中にいるやつ〜〜!
瀬戸内海のふかいところで採取するから、簡単には見れないらしい。
底にいる魚の死骸とか食うみたい。
かき混ぜると、発行体を分泌するらしいんだけど、そこだけ外でみるんかい!
1回目はぶわーっと出してかなり明るくなった。
なかなか暗くならない分泌液。
2回目は弱いの出すから、すぐ消沈。
食われた魚のたましいみたい。
「これで観察会をおわりにします〜。ご清聴ありがとうございました〜。」
ようやく終わった。
やっぱり夜のうさぎと戯れたい。
日が暮れてすぐだからめっちゃ元気。
白いうさぎは僕のお気に入り。
星もきれい。
ねえねえ、まだ海にいかないの?
そう思った方は、明日のVol.4をお待ちくださいませ。
RIO