たいちゃんは完全にダイビングの勘を取り戻していた。
でも、知床でのダイビングはこれで全て終了となった。
(約一名、重大なトラブルが発生したのだがその内容は伏せておく)
番屋に戻ると観光船欠航の連絡が入ってきた。
やはり変更の旅。
ホタテを選んでおいて正解なのであった。
観光船が出なくなったのでお土産屋の時間。
民宿よねまるから歩いて5分のところに道の駅らうすに向かう。
新鮮な海産物が安いとあって北海道中の人たちが集まっていた、と思う。
お盆休みと重なっていたせいか、駐車場はほぼほぼ満車だった。
さっき見たホタテが売られていた。
あの愉快なホタテたちもやがてはここに並ぶのだ。
そう思うと少し悲しい気分。
ふじこの好きなミズダコの足もあった。
ふじこは無類のタコ好きである。
「これはオスですねえ」
この大きさで2500円前後だったと思う。
刺身でも食べれるので、かなりお買い得だ。
送ると送料の方が高いけれど。
その後、一人で散策。
前回、氷でガチガチだった神社が気になったので行ってみた。
夏に来ると、なんちゃない神社に変貌していた。
凍りついて滑りまくるコンクリート階段は、なんちゃないコンクリート階段になっていた。
なんちゃない虫だけはやたら多かったが。
参拝客はゼロ。
これは前回と同様。
この神社は冬来るのがよいと思う。
先ほど欠航したばかりの観光船が停泊している羅臼の港に行った。
そこで、ルアーを投げる3人の釣り人を見つけた。
やはり風は強い。
3人の釣り人は川に遡上してくる鮭を狙っているようだった。
でも、鮭はまだ来ていない。
静かな釣りだった。
時間になったので宿に戻り、支度をすませて知床ダイビング企画へと向かう。
シャチを探しながら車で15分、知床ダイビング企画の黄色い建物が見えてくる。
事務所兼倉庫兼自宅(関さん)である。
指導団体はブルーアース21長崎と同じNAUI。
玄関を入ると撮影機材が並んでいた。
今回は、関さんと関さんの奥さんしかお店にいなかった。
関さんに麦茶とお菓子をいただき、一通り落ち着いたところでログブックをつけ始める。
見たことがない生物のことを聞く。
関さんが語り始める。
ピンと張っていいた糸が緩む。
贅沢な時間。
暖かい時間。
そして、お待ちかねのサインタイム。
Tシャツに描かれているイラストはすべて関さんが描いたものである。
関さんは写真だけでなく、絵も文章もプロなのだ。
ちゃんまりは「トドTシャツ」購入した。
素材はスポーツ系。
ちゃんまりが着ると天神系に着こなす。
たいちゃん、前田、ザッキー、ちゃんまり、RIO、朝顔がTシャツや写真集を購入していた。
唯一、ダイビングだけがなんの変更もされずに遂行できたのは関さんの(運?)おかげだと思っている。
次回もぜひ一緒に潜ってもらいたい。
器材を発送する準備を済ませ、関さんに別れを告げた。
(僕の荷物だけが行方不明となり福岡に届かなった。到着したのは1週間後。)
向かうはナイトサファリの集合場所、昨日も立ち寄った道の駅ウトロ。
夜になると車中泊の車だらけだった。
(この駐車場での車中泊は禁止されている)
このナイトサファリツアーは大人一名3100円を支払い、10人乗りのハイエースに乗り込む。
ガイドが車の中から野生動物を教えてくれるサービスとなっている。
それにしても車の中が冷たい。
車内にはなぜかエアコンを効いている。
窓も開けていたので、冷たい風も入ってくる。
車内温度は15度くらいまで下がっていた。
知床五湖を歩く用のフリースを持ってくるべきだったと後悔した。
知床五湖周辺の道路をゆっくり流しているとキツネに出会う。
キツネが活発な時間帯は、レオくんと同じ、明け方と夕方の薄暗い時間帯。
薄暮。
キツネが車のフロントガラスに当たって落ちた虫を食べにきていた。
この辺のキツネは車に慣れすぎているみたいで、近寄っても逃げる気配はなかった。
ガイドさんが車の窓から照らしてくれたのはシカ。
遠くてよく見えないけど、よねまるの前にいるシカと同じ種のシカであった。
橋の上から見つけたのは川を渡るキツネ。
よねまるの前にいるキツネと同じ種であった。
ナイトサファリツアーを行なっている別のハイエースと何度もすれ違う。
時折、ガイド同士で情報交換をしていた。
どうやら今夜はシカとキツネしか見れない日らしい。
ふじこは寝ていた。
朝顔は風邪をひきかけていた。
僕は寒さに耐えながら、予定の1時間30分が過ぎるのを待っていた。
定刻ちょうどに道の駅に戻ってきた。
結局、ふじこと店長の希望していたシマフクロウ、ウサギ、ヒグマは見れなかった。
ガイドさんはちょっとバツの悪そうな顔しながら帰っていった。
それもそのはず、3100円払って、シカとキツネなのだから。
奄美で参加したナイトサファリみたいなものだろうと期待したのが間違いだった。
熊の湯であたたまって明日、最後の観光に備える。
熱いことで有名な熊の湯がこの日はなぜかぬるかった。
このツアーでは温泉の温度までもが変更されていたようだ。
羅臼に戻ってきたら、公民館の芝生にシカを見つけた。
8頭くらいいただろうか、大型のシカも混じっていた。
近寄っても逃げずにそのへんをウロウロしていた。
写真はないが、キツネが獲物をくわえている場面にも遭遇した。
獲物は30センチくらいあったので、鳥か魚だと思う。
街中で見ると、なかなかの光景であった。
こんなことなら、関さんのところでもっとゆっくりして、羅臼をもっとゆっくり見てまわって、温泉にもっとゆっくり浸かって、酒でもゆっくり飲めば良かったと後悔した。
あんたたちナイトサファリなんか行ってなに見るのさ!
この辺で見れる動物はシカとキツネとクマしかいないしょや。
わざわざウトロまで行って、お金まで払ってきたのかい?
あらまぁ困ったもんだわ。
帰ってきた僕たちによねまるのおばちゃんは笑いながら言った。
ふじこと店長は顔を見合わせた。
最終章
Vol.6に続く
RIO