3日目の朝。
女子たちは6時に集合してお散歩に出かけた。
根室海峡に面した海岸線を知床灯台に向けてひた走り、最終地点は相泊である。
サンライズ女子の元気さは、脱毛とAGAと眉毛アート好きの美容男子には決して負けない。
ここで美容大好き男子に物申したい。
誰でも歳を取れば、
頭は薄くなるし、老眼にもなるし、爪に縦線が入るし、白髪になるし、手もカサカサになる。
シワもシミもガツンと増えてくる。
大枚を投じれば、幾分老化を食い止めることができるかもしれないが、完璧には無理だ。
それが生物の定めだからである。
はるか昔、生物は死ぬことができなかった。
死んでしまうと種が滅びてしまうので、ボロボロの体になっても生き続けるしかなかった。
14億年前、オスとメスが生まれた。
オスとメスが交わることで、新しい細胞が生まれてくることを生物は知ってしまった。
この大革命により、親は死んでもいいという権利を得たのだ。
つまり、老化も生物の権利ということになる。
そもそも、すね毛ツルツルでもおっさんなってしまったら、まず間違いなくおなごからは相手にされなくなってしまう。(芸能人と金持ちは除く)
僕が思うに、すね毛ツルツルで頭の悪いおっさんになるよりは、すね毛モサモサでも知性と教養のあるおっさんになった方がいいのではあるまいか。
「整形依存」という言葉があるように、美容は沼に落ちやすい。
そんなことにお金と時間を費やすくらいなら、「本」を読んだ方がいいし、ホツマツタエを勉強した方がいい。
ついでに日本の政治にも興味を持ってもらいたい。(間違ってもホリ◯モンだけは見ないように)
君たちが思っている以上に若者時代は短く、おっさん〜爺さん時代は長い。
(ちなみに、「変なもの」を日常的に食べなければ、ハゲにくくなるし、老化しづらくなるし、健康も維持できるので、お金をかける必要がなくなる。お試しあれ!)
まずは羅臼神社へと向かった。
羅臼神社は、何回行っても良いことしかない特別な場所。
手水舎の水は清く冷たく美しい。
北海道の水道水は冷たいのが基本だと北海道の人が教えてくれた。
凍らないようにするため、地中深いところを水道管が通っているからだそうだ。
羅臼の神様には、
「災いなき旅になりますように」と祈願した。
この日も蝦夷桜は満開。
神社の奥で、水が飲めるところを見つけた。
羅臼権現水。
羅臼岳から流れてくる大変綺麗なお水。
早速飲んでみる。
お味は至って普通の軟水。
ラムちゃんとあやかちゃんはキツネのエキノコックス症を心配していたので飲まなかった。
エキノコックスは、世界の中では主に北半球(寒い地方)で発生しており、日本では北海道を中心として、見られる病気である。
感染 | 卵が体内で幼虫になり寄生。 |
第一期 (潜伏期) |
○数年から10数年位無症状の時期が続きます。 ○肝機能は正常域です。 ●血清検査でしばしば陽性。 ●腹部超音波検査、CT検査などで肝臓を病巣が認められます。 |
第二期 (進行期) |
○5年から10数年位経過 ○初めのうち、肝機能は正常域です。 ●肝腫大に伴う上層部の膨満・不快感などの不定症状がでます。 |
第三期 (完成期) |
●肝機能障害がおこります。 ●腹部症状の増強、発熱、黄疸などの症状がでてきます。 |
数年潜伏するところが怖い。
気になる人は、一度病院に行かれることをお勧めする。
次に、クジラの見える丘公園に向かう。
「手すりの外に出るのをがまんしましょう」が印象的な看板があった。
景色は最高。
天気はもっと最高。
でも、観光客は皆無。
観光客の車は一度上まで上がってきて、Uターンしていた。
謎はすぐに解けた。
車はすぐ下の道路に停められていた。
ここからの方が「海の動物」が見つけやすいとのことだった。
動物好きおいさんたちはよく知っている。
今の時期だと、シャチが見れるらしい。
ここに滞在して、1時間観察するのが基本だそうだ。
シャチは、最終日にクルーズで見る予定なので、早々に次のスポットへと移動を開始した。
セセキの滝。
3月に見た時、滝は凍っていたが、今回は程よい水量で落下していた。
美しい。
滝のすぐ近くに瀬石温泉の看板があった。
この字は、おばちゃんではなくて、おいちゃんが書いたと思われる。
ここを降りていくと温泉がある。
ラムちゃんは温泉に手をつけて、「なんか冷たい!」と言った。
それは温泉ではない。
ただの池だ。
ラムは、「池田」だけに池を温泉と勘違いしたのだ。
本物はこちらになります。
「あったか〜い!」
そらそっさ。
今は整備されてないから入れんけれど、れっきとした温泉たい。
さらに北上して行くと、鹿の親子が道路を歩いていた。
図体のでかいハイエースと鹿がぶつかれば、100%鹿の方が負ける。
一本道なので、慎重に運転したいところ。
相泊についた。
羅臼方面からの最北端である。
この先はヒグマが大勢潜んでいる。
ヒグマ撃退スプレーを持って行った方がいいだろう。
その際はレンタルがおすすめである。
ヒグマをなめたらあかん。
もともとAM5時30分に集合する予定だったのだが、睡眠不足解消のためAM6時に変更されていた。
最終目的地である相泊についた時点で引率リーダーであるサチコは気づいていた。
「朝ごはんを食べられないかもしれない」
それはサチコにとって絶対あってはならないことのひとつだった。
「みんなをひもじい気持ちにさせないこと」
「美味しいご飯を食べさせてあげること」
それはこの旅におけるサチコの絶対的使命だった。
解決策は、走行スピードを上げて時間短縮を図るという至ってシンプルな方法がとられることになった。
87号線を南下し始めて数分後のことだ。
助手席に乗っていたフジコが、「あっ!シカ」と囁いた。
そのシカは路肩から、道路の真ん中へと飛び出してきた。
サチコは力の限りにブレーキペダルを踏みつけた。
搭乗者全員の上部肋骨がつんのめった。
「シカ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
誰も聞いたことのない切実な叫び声が響き渡った。
車はシカの1m手前で停車した。
そのシカは行きがけに見たシカのお母さんだった。
シカのお母さんは子供シカの安否を確かめると、体をブルっと震わせ、何事もなかったように林の中に消えていった。
シカのお母さんが去った後も、朝顔の体は運転席まで乗り出したままだった。
目を真っ赤にして涙を浮かべていた。
右手は伸びたままだった。
ここで、サンライズ動物過保護者ランキングが入れ替わりました。
1位 ノリコング (ウロコインコ2羽)※不動の1位
2位 朝顔 (ウサギ)※急上昇
3位 フジコ (デグー)※ランクダウン
3位 前田 (ウサギ、オカメインコ、マリギナータリクガメ)※ランクダウン
5位 セナコング (猫2匹)
6位 つばさ (猫2匹)
7位 マユコング (猫1匹)
8位 きゅう (コザクラインコ)
9位 ひろし (ハムスター2匹)
10位 RIO (現在手ぶら)
ここにぴーちゃん時代のロイ子を入れたら、前田とセナコングの間、4位になります。
食べる時間が30分しかなくても、まゆみさんはごはん茶碗2杯をしっかり食べる。
どんな状況下でも豚道を貫く姿勢は立派です。
番屋に向かう道中、前日ニークラさんチーム(店長、ザッキー、まゆみ、ふじこ、朝顔)だった人たちが、
今日はアオヤギさんにガイドしてもらいたいと言い出した。
理由は、
怒られてばっかりで、手助けもしてくれなくて、ナメダンゴウオとトクビレとケムシカジカが、自分たちだけ見れなかったから。
まゆみと前田は、みんなもニークラを経験した方がいい!全てを平等にした方がいい!それが今流行りの新共産主義だろ!SDGSだろ!LGBTQだろ!
変えろ!変えろ!変えろ!変えろ!と大合唱をはじめ、言うにことかいて、「憎きニー◯ラ」などとほざきだした。
「その変更は俺が許さない」
ブリーフィングが終わり、
「では、前日と同じチーム編成でいきましょう」とニークラさんが言った瞬間、僕は「わかりました」と大きく返事をした。
これによりチーム変更は夢のまた夢となった。
まゆみと前田は苦虫を噛み潰したような顔で僕をにらみつけた。
自分の思い通りにならなかったら、容赦無く不平不満をいうのがまゆみと前田の特徴である。
それゆえ、似たもの同士(笑いどころが同じ)と呼ばれるのだ。
チームが分かれたところで、アオヤギさんチームは和やかに物事が進む。
ニークラさんチームはどうだったのかというと、
前田サチコの「みんなで作りあげる技術」を発揮し始めていた。
弟子であるまゆみも援護し始めていた。
受け身からの卒業である。
主体性を持ち、一緒に作り上げる技術というのは、ダイビングにとって大事なスキルの一つだ。
ここから、彼女たちの本気のダイビングが始まった。
1本目はトド岩からエントリー。
テトラがすっかりなくなっていて、なだらかな坂になっていた。
足場が格段に良くなっていた。
青海島の内海に似ている。
うん。すごい楽しい。
うへへ。
これこそが、ビジネス陽キャに変身した瞬間である。
トド岩の間をすり抜けて、急坂を降りる。
水深10mを過ぎた地点であやかちゃんの耳が抜けなかった。
僕の落としたライトを拾った時点で抜けなくなったらしい。
あやかちゃんにしては、珍しいトラブルだ。
たまに抜けないときもあるんですけどぉ〜
緊張と寒さによる食いしばりと慣れないグローブで鼻がつまみにくかったからですかね〜
と、菅野美穂風に話していた。
あやかちゃんは、これまでの経験をもとに耳を抜き、自力でフサギンポに辿りついた。
素晴らしい。
ピグモン怪獣はフサギンポから作られました、というのは真っ赤な嘘です。
フサギンポはタウエガジ科の中では大型の魚として有名な種です。
コケギンポとジョーフィッシュを足して、でっかくした風貌が魅力です。
ニークラさんチームはというと、
ビジネス陽キャに変身した前田がニークラさんの気分を盛り上げたおかげで、ニークラさんのテンションが確実に上がってきていた。
積極的に生物を教えてくれる、優しきガイドさんへと変貌を遂げていた。
※こちらサイドから見た「主観的感想」ですんので、話半分で聞いておいてください。
見ての通り、ふじこの機嫌も上がり調子。
イエーい!
すずちゃん(フジコが飼ってるデグーの名前)に、美味しい魚の動画を持って帰ってきたるからな。
まっときんさいな。
ヒダベリイソギンチャクが岩肌にびっしりと生えていた。
とにかくゴツい。
誰にも負けない。
絶対負けない。
でも、絶対食べない。
昨日も見れたエゾメバルは、カサゴとメバルを足したようなTHE日本の魚。
もし、和食屋の水槽に入っていたら、その和食屋のこと絶対好きになる。
オニカジカも入っていたら、もっと好きになる。
かわいすぎるでしょ。
これはクマガイウオという魚。
アツモリウオは美しい見た目をしていることから、美少年平敦盛から由来しているのに対し、クマガイウオは熊谷次郎直実。
クマガイウオは、アツモリウオと同じトクビレの仲間。
よく見ると色と形に若干の違いがある。
こっちの魚は、綺麗だから敦盛で決まりだな。
敦盛のライバル誰だっけ?
熊谷次郎直実でいいんじゃないか。
全然強そうじゃないけどwww
2匹向かい合えば、源平合戦だから面白いだろう。
よし名前も決まったことだし、酒でも飲むか。
そんなふうに決められたんだと思う。
日本人は昔から語呂合わせが好きなのだ。
僕が好きな語呂合わせは、昆布を食べると、「喜ぶ(よろこんぶ)」である。
確かに昆布を食べると体は喜ぶ。
熊谷さんのライバルがここにもいた。
これは敦盛さんの当たり月かもしれない。
アツモリウオの体色は黒になったり、白になったり、黄色になったりする。
今日の敦盛さんは、熱帯魚には出せない独特の朱色だった。
ダイビングも中盤、トド岩をぐるっと回って、以前ミズダコの夫婦がいた穴に向かうも不在。
逆に、ナメダンゴはどこにでもいた。
すごい海だ。
色は色々。
これは帰る途中の風景。
ミズダコはここにいた。
浅瀬の岩場。
水温が低いせいかおとなしかった。
でも、絶対さわりたくない。
「死因ミズダコ」は嫌だからね。
1本目が終わっても海が荒れる気配は感じなかった。
沖の方まで穏やかで、空は遠く晴れ渡っていた。
3本潜れることが確定した。
羅臼という地域は思い通りにいかないのが普通なのだ。
もし、昨日の風があの調子で吹き続けていたら、今回のツアーは1ダイブのみとなっていた。
なので、この状況は奇跡と言って差し支えない。
2本目は、沖に見えているトド岩を右にみながら沖に出て、左回りにぐるっと回るコース。
ニークラさんチームは、この魚をオオカミウオと間違えてしまった。
これはムロランギンポという魚である。
オオカミウオを見たことない人だったら、これがオオカミウオですと言われたら信じてしまうだろう。
サンライズの人たちのように魚マニアでなければの話だけど。
この魚、ザッキーと前田は見ていない。
水深10m付近でザッキーの耳が抜けなくなったので上がったからだ。
バディだった前田もザッキーに付き添いダイブタイム8分。
残念ではあったが、ザッキーはここでリタイヤした。
知床では思い通りにいかないのが普通と思ってください。
例外はないんです。
逆に、特別が普通になったりするから、計り知れない面白さがあるんです。
皆さんも知床に潜られる際は、
どんなときも、僕が僕らしくあるために好きなものは好きと言って、自分らしく潜ってください。
であれば、ダイブタイムが短くても問題はありません。
ザッキーがみんなを待ち受けて撮影したエキジットの様子。
愛を感じる。
VOl.4に続く