僕はあたらしいことを考えてそれをみんなに提供するのが仕事です。
なので、生きながらにしてあたらしいことばかり考える癖がついています。
たとえば僕が中華料理屋の店主だったとします。
来年の新作は日南マンゴー焼売にしようと思ったら、精一杯、味と形を想像して試作を作っていきます。
途中マンゴーがキウイになったり、焼売が濡れ煎餅になったりと大変な作業を経て、商品として出せる形ができあがると、僕は自信を持ってそれを店長へと渡します。
店長はそのサンプルを手に取り、(悪態をついたり、ため息をついたりするのかな?)
サンライズのひとたちにそのままの味と形で売りだすこともあれば、外見を変えたり、中身を変えたりして売りに出すこともあります。
いつしかそれが定番化してくると、非常勤スタッフのひとたちも味見をして、同じものを作ろうと努力するわけですが、それはなかなか難しいことです。
僕や店長とおなじようなスキルや知識があるものとして作られているわけですから。
非常勤スタッフの人たちが作ったものは、一部がまだらだったり、研ぎ澄まされすぎていたり、相反するものが混在していたりします。
僕はコピー商品ばかりを売りたいなんて思ってはいないのですが、さすがにこれはちがうだろうと首をかしげることがあります。
そんならちのあかない焼売だったとしても、「これはこれでうまいよ」と寛容に食べてくれるサンライズのひとたちはほんとうにえらいなあと思います。
サンライズのひとたちは自分たちで考えて行動するから人間ができているんでしょうね。そんな人というのは実際には少ないと思います。
非常勤スタッフという名をつけてはいますが、コアな研修生という立ち位置でがんばってもらっていますので、そこにはいつでも勉強がついてまわります。
でも勉強ばかりだと息がつまりますし、疲れてしまうので、たまには思いっきり遊んでリフレッシュしてもらおうと今回の旅行を企画しました。
こういう特別な旅行というのは言わずもがなサンライズが培ってきた濃縮エキスがつまっています。
それを惜しげもなく味わえるのは非常勤スタッフの特権です。がんばった甲斐がありました。
新鮮な刺激を受け取ってほしいという願いも込められています。
朝の6時にサンライズに集まった面々。
そこで天草にいくことを告げられました。
今年の夏に頑張ってくれたたつぼうは長期出張のため不参加でした。残念ですがそれもまた人生です。
以前、お世話になっていた、とどろきまんたろうに寄ってみました。
ちょっと見ないうちに廃屋化が進んでいました。
建物に近づくとまあさの手料理がぱっと頭に浮かびましたが、それは遠い昔のようにも感じられました。
3時間半かけてついた先は妙見ヶ浦。
天草屈指の地形のポイントです。
この日の風向きが宮崎ではないと告げていましたので、こちらは完全なベタ凪でした。
僕はT-WING。骨組みに手を加えていくと、ようやく馴染んできました。
店長はアウトロー 。ドライになるとSプロは封印です。
コンバットさんは目の具合がよくないので、海には入れません。
自慢のSONY α6500を持って撮影係。
行きは崖を降りて、ゾウさん方向からエントリーです。
台風で足場が崩れていました。
シリンダーを背負って不揃いな岩のうえを歩く技術も必要です。
でも、頑張ってこちらから入るとゾウさん岩の水中地形が綺麗に見れます。
水温は25度。志賀島とそう大差はありませんが日差しが強いのであたたかく感じます。
洞窟の前まで泳いで潜ると、目の前にはくっきりとしたクレパスが広がっています。
砂地の上にくると、ねっころがりたくなります。
洞窟へと切れ切れにはいってくる光が空気のリングに当たってとても綺麗でした。
洞窟には定番のハタンポが群れていました。
ハタンポは僕が好きなさかなのひとつです。
このポイントは透明度がよくてサンゴが少ないので生物があまり定住していません。
その代わりにウツボ が住んでいました。
よくみると可愛い顔をしています。
胴が太くて顔が大きいのでなかなか見応えがあります。
あたりまえですが、この褒め言葉は人間に向けると褒め言葉にはなりません。
僕はここでめずらしいウミウシをみつけました。
これです。
「アメフラシですよ」と強く教えられましたが、たとえそれがアメフラシであったとしても僕にとってはめずらしく見えたんですからそれでいいんです。
そんな自主規制めいたことを求めるというのは、最も巧妙で陰圧な抑制です。サンライズ はもっと洗練されて成熟したお店にならないといけないんです。
小夏はしっかりうなずいていました。
ゾウさんの岩からもうひとつ沖の岩までくると、またもやクレパスがあります。
そこまでくると、たびたびブリとカンパチの群れに遭遇しました。
素手にして手を振ると向きを変えてよってきます。
一風変わったトラウツボ もいました。
ゴールデンモーレー(命名)もいました。
ツマグロ岩をぐるりと回って(ここは僕の嫌いな水深15mなので急ぎ足)最後のクレパスにくると大きなヒラメがいました。
ぜんぜん逃げないので、その大きさを観察できます。
実をいうと、僕はここにきて初めてウツボ をみました。
ウツボ はなんども見たから別に教えてもらわなくてもいいと言われたので、ひとりきりでウツボ と向き合いました。口を開けて威嚇されてもそれがウツボだから別に気にしません。
僕はこのウミウシを見ていません。
店長はどんなに生命感が薄い海でもしっかりウミウシを見つけてきます。ほんと感心します。
反対側からエキジットしました。コンバットが遠くの海岸から歩いてくるのが見えました。
濡れて重くなったBCを背負ったままこっちにくるまで待ちました。
顔がなんどもひきつりました。
シャッターチャンスを逃しまくるカメラマン、コンバットさんありがとう。
さっと水を浴びて移動します。 こんなときは正直ドライが快適です。
どっちにしても、これ買っといてよかったです。
明日へとつづく。
RIO