タコの生態を知るため、このたび「サンライズタコ釣り部」が発足した。
タコが大好きなフジコちゃんの提案である。
調べるのはタコだけ?と思った方もいるかもしれない。
ヒラメや真鯛やサワラやカワハギも調べてみたい!と思ったら、それなりの道具と技術と知識を必要とする。
極めようと思うと「青天井」なのが釣りという趣味。
あまり知られていないが、ダイビングの比じゃないほど金がかかる。
昔から「悪魔の趣味」とも呼ばれている所以である。
お金をかけないように釣りを楽しむこともできるが、その場合、小さめの魚がメインターゲットとなる。
(アオリイカ釣り、エギングが流行っているのは、その辺の堤防で大きいイカが釣れるからだ。
道具も比較的安く、荷物も少なく、何より魚臭くも撒き餌臭くもならない)
コンスタントに大きい魚を釣ろうと思ったら、秘境のような地磯に行かなければならない。
重たい荷物を抱えて藪漕ぎするのは、素人釣り師にはハードルが高すぎる。
(渡船を使わず沖磯に行くにはドライスーツを着て泳いで渡るか、ゴムボートでいくわけだが、リスキーすぎるのでおすすめしない)
また、疲れ果てていても時合いが来るまで竿を振り続けなければいい釣果は得られない。
やはり、ある程度の釣果を楽しく得るためには、お金が必要なのだ。
それに釣りはダイビングと違って、生物を「殺す」という作業がある。
目がクリっとした可愛い魚を締める時、かわいそうだなという気持ちが湧いてくる。
ダイバーは魚をペットのように見る癖がついている。
釣り師になるためには、ダイバーとは真逆の感性を持たなれけばならない。
そういう意味でも、ダイビングショップに「釣り」を持ってきてはいけない。
そこにきて、タコはいい。
その辺の堤防で釣れるだけでなく、仕掛けも簡単だし、釣り方も簡単。
イカと違って「引き」は楽しめないが、陸に上がってきてからの迫力がすごい。
タコを殺したくないと思う人はじっくり観察して海に返せばいい。
解剖したいと思う人はそのあと食べて供養してあげたらいい。
タコは賢いので、飼っても面白いかもしれない。
先に言っておくが、タコ釣り部は「タコを調べること」「タコを感じること」「タコを好きになること」が目的なので、大漁も記録も目指してはいけない。
食べるための目的では釣りをしない。
一人につき1匹釣れるくらいで十分なのである。
タコは夜に行動するので、暗くなる前に仕掛けをセットし、竿捌きに慣れておく。
昔ながらのタコ釣りの擬似餌。
偽のカニだ。
これにタコがささっと乗ってきて、針に引っかかる。
針にカエシはないので、緩めると外れてしまう。
タコはUVも感知するので、光る系もある。
フジコ部長は白をチョイス。
フジコ部長曰く、タコは白いものが好きであるとのことだ。
この日は突然の冬日。
北西風が7mほど吹いており、体感温度は8度くらいだった。
寒風吹き荒ぶ中、黙々とテナガダコを狙うフジコ部長。
フジコ部長が持っている竿は、お父さんから小学生の頃に買ってもらった竿だ。
よく見ると4mの長さでまあまあ太い。
リールもデカかった。しかも錆びていて回りにくい。
この竿を小学生の腕力で扱えるとは思えなかったが、案の定、お父さんが愛用していたらしい。
テナガダコは陽が落ちないと食ってこない。
投げる練習を兼ねて、ブラクリ仕掛けに青虫をつけて五目釣りを開始。
フジコ部長のお父さんが家の冷蔵庫にゴカイを冷やしているらしく、それを見て育ったフジコ部長は、ゴカイに対してトラウマレベルで気持ち悪がっていた。
しかも、フジコ部長のお父さんは生きたゴカイを歯でちぎって針につけるらしく、それを見てからさらに気持ち悪くなっていた。
ネイチャーガイドフジコの意外な一面である。
そういう人は擬似餌のゴカイ(パワーイソメ)をつけたらいいが、やはり食いがいいのは生きているやつだ。
基本的には頭を切ってつける。頭には2本の牙がついており油断すると噛み付いてくる。
反対から刺すと身がポロポロ切れるので必ず頭側から針に差し込んでいく。
最初に釣ったのは、これまでたくさんの魚を釣ってきた店長。
ハゼだ。
ここは多々良川の河口なのでハゼが多い。
もっと寒くなるとハゼは深いところに行ってしまうため釣りにくくなる。
アタリを掴むのに慣れてきたのか、みんな釣れだしてきた。
これはクサフグ。
最近、この堤防にはクサフグが上から下まで乱舞しているので、エサを取られたらフグだと思っていい。
ハゼならちょこまかエサをとったりしない。
バクっと食ってくる。
フグの歯は一枚刃なので、針を飲まれたら糸は切れる。
手を入れたらざっくり切れるので要注意。
フグをバス持ちする人はいないか。
たつぼうは釣りがひさしぶり。
ハゼを撮るのが好きなたつぼうは、見るのも大好き。
今回、ハゼもフグも観察したらみんなリリースした。
ハゼは吸い込むようにエサを食べるため、針を飲み込まれやすい。
引っ張ると内臓が傷ついてしまうので、喉の奥に「針外し棒」を入れてとるようにするといい。
日暮前、おーちゃんも釣って全員安打かと思いきや、フジコ部長だけ釣っていなかった。
フジコ部長の竿は長くて竿先が太いのでアタリを取りずらい。
太い竿は、でかいタコには威力を発揮するが、繊細な釣りには向いていないのである。
しかし、フジコ部長の狙いはあくまでタコ。
陽が落ちたのでタコ仕掛けに変え、先端付近に移動する。
ドームとタワーの光が綺麗だったが、ここにいるともろに北風を受けた。
陽も落ちているので、体感温度は6度くらいまで下がっていた。
誰か一人でも釣れてくれたらテンションも上がるのだが釣れる気配はなかった。
手が冷たくなり、体も震えてきたので、7時で納竿とした。
フジコ部長から送られてきた資料。
11月は産卵が終わって、親テナガダコは死んでいる。
子供テナガダコはいるが、カニを食うまでには至っていない。
厳寒期は釣れない。
5月からシーズンイン。
そういうわけで、テナガタコ釣りは5月までお休み。
マダコが釣れるところがあれば行ってみてもいいが、おそらく垂直に深い堤防でしか釣れないと思う。
調べて行ってみてもいいが、12月〜2月までは寒すぎるのでやめておいた方が無難である。
3月ごろから再始動がいいだろう。
ちなみに、タコ釣り部の狙うタコの種類は、
マダコ、テナガダコ、ワモンダコ、ミズダコ、ヒョウモンダコ、スナダコ。
となっている。
RIO