僕はアイナメが好きである。
見た目は、田舎の弱小高校の女子バスケ部員のような、地味な雰囲気に似合わず、頑強そうな体躯と、大きすぎて泳ぎにくそうな胸ビレが特徴で、性格は、協調性がなく、B型女のような自由さをも併せ持つ。
夏の間は深海に隠れて、引きこもっているが、9月を過ぎて気温が下がり、過ごしやすくなると、繁華街(浅瀬)に出てきて、駅前の定食屋(岩の隙間)で大盛りのご飯の海老天丼を頬張る大食漢だ。
そして腹がいっぱいになったところで、誰もいなくなった冬のグラウンドで、アイナメ同士、自由奔放な性を楽しみ、イエローオパールのような天然石に似た卵を無数に産みつける。
そして、黄色のコートを纏った(婚姻色)お父さんは、敵からイエローオパールを盗まれないように、鉄壁のガードマンへと生まれ変わる。
24時間片時も目を離さず、見守るお父さん。
少しづつ成長する子供たちを微笑ましく思い、もう少しの辛抱だと頑張るアイナメのお父さんは意外な事実を目の当たりにすることになる。
なんと、アイナメの卵を狙ってくるのは、なんと同じアイナメだったのだ。
どうやら、アイナメはアイナメの卵が好物らしい。
奥ゆかしそうな雰囲気はどこへやら。なんとも猟奇的な魚である。
その猟奇的な一面は、佐世保で起きた陰惨な殺人事件を思いだす。
無口でおとなしい小学校六年生の女児が、同じ六年生の女児をこっそり呼び出し、カッターナイフで切りつけ殺害したあの事件だ。
若い女子が若い女子を殺すというのは、人類繁栄の反逆の証ではなかろうか。
同じくアイナメの繁栄をアイナメが阻止するというのも、遺伝子レベルで説明がつかない行為なのだ。
それほどまでにご飯がないのがわかっているのなら、夏に産むべきなのであるが、そればかりはどうしようもない。



