捨て瀬はうさぎが跳ねていた。
うねりにまでは達していなかったが、潜るにはきつかった。
呼子の灯台には入れないので、選択肢はただ一つ。
ご存知、名護屋城のふもとである。
しかし、北東の風を100%かわすことはできていなかった。
見渡す限り、小ぶりのうさぎが跳ねていた。
定期船の引き波が水面のざわつきに拍車をかける。
海面に慣れていない人であれば早々に疲れてしまうであろうことは予想できた。
色々とやりたいことはあったのだが、耳抜きができないことには始まらない。
前回同様、やまさんは、頭から入る耳抜きに苦戦していた。
普通にやっていては進まないので、スタートは足から入り、途中で頭から入り直すといった方法で深みを目指した。
次に、勾配を緩くして、自分なりの耳抜き角度を模索する。
時折、抜けるようになってきた。
しかし、水面のざわつきが回復のチャンスを奪っていった。
こればっかりでは飽きてくるので、ウエイトを外し、浮力を確保してから堤防沿いのウミウシを見つけて遊ぶことにした。
水面からなので、シロウミウシ1匹しか見つけることができなかった。
とはいえ、水深1.8mのところにいてくれたシロウミウシに感謝である。
その後も練習を続けたやまさんはいよいよ体力を消耗してしまったので、切り上げることにした。
合計で120分。
初めての素潜りにしては上出来である。
素潜りの練習は、風と波がない方がいいに決まっている。
しかし、このくらいの荒れはどこの海でも当たり前に起きる。
海という過酷な環境に慣れておかなければ、どれだけ素潜りの技術が向上しても潜ることはできない。
ベストは、最初は荒れていて、二日目は穏やかで、三日目はその中間くらいで講習が終わる。
透明度も、いい、ふつう、わるいを経験する。
目まぐるしく変化する環境の中で、素潜りの技術がついていけば、勝手に上達していくと僕は思う。
RIO