先に断っておくが、今回のブログは、これこれがどうだったという、いつものブログではない。
カステラカップに初参加した、僕の意見と感想を洗いざらいに書いていこうとおもっている。
まゆこんぐの、もたもたした動きががほんとむかついたよね、みたいな話は、暇な移動中の車内でお願いしたい。
正直なところ、毎度、毎度そんなことばかりを書き綴っていると、さすがにこっちも飽きてくるのだ。
ひとつご了承願おう。
まず、写真を撮るという行為について考えねばなるまい。
なぜ、われわれは写真を撮るのか。
撮りたいとおもうのか。
個々でいろいろな理由があるのだろうが、簡単にまとめれば、僕はこのようにおもっている。
自分にしか生み出せない記憶と空間を切り取って、後世にまで残しておきたい。
人目を惹く芸術性があればなおよいとは思っている。
だからといって、できふできはそれほど関係がない。
その写真を見直したときに、過去の光景がすっと立ちあがり、果たされなかった思いのようなものが、ゆらゆらと投影されればいいだけなのである。
逆をいえば、記憶を蘇らせるつもりのない事象に関して、わざわざカメラをかまえる必要がない。
撮らない期間が長くなることも、いたしかたないというわけだ。
僕のささやかな写真観においては、バカチョンカメラでもぜんぜん構わないわけである。
やはり僕にとっての芸術は文芸であり絵画だ。
写真はあくまで活力を与えてくれるタイムマシン。
写真がいっさいの芸術になりえないのかと質問されれば答えばNOだ。
人、魚、ウミウシ、動物。
なぜだかわからないけれど、顔の写真というのは、ある種の芸術性を感じずにはいられない。
そんなわけで、カステラカップが始まったわけだが、参加人数は我々サンライズが3チーム(9名)と全体の半数をしめていた。
僕はここに来る前から、優勝するのはサンライズであると確信していた。
人数が多いので勝つ確率があがるから、なんてことは考えもしなかった。
サンライズのひとたちは写真がうまいから勝つだろうという単純明快な理由からだった。
カステラカップはいくつかのしばりを設けていた。
50分以内。
残圧30を切ってはいけない。
指示棒、ハケはだめ。
ひとりでももっていると全員失格。
撮影前に必ず、ブイを撮らないといけない。
撮っていないと写真を提出できない。
ポイントは1〜5。
西から入り、旗岩からサンゴ岩まで泳ぐ。
水中距離はなかなかのものだ。
疲れさせたい、時間を奪いたい、エアーを使わせたいというのが、見え見えであったが、それもまたゲームを面白くする要素なのだろう。
親切にも海底にロープがひいてある。
目を閉じない限り、迷うことはない。
それぞれのポイントで、撮る被写体は決まっている。
何枚撮影してもかまわない。
ただし、あがってすぐにガラガラを 「2回」ひく。
例えば、1と5の玉が出てくれば、ポイント1と5で撮った写真を提出しなければならない。
もちろん自信のある写真があたるとは限らない。
潜り始めてから、120分以内に写真を3枚提出しなければならない。
くじでひいた2枚に加えて、1と5以外で撮れた自信作の1枚を選ぶ。
わいわい昼飯食べていたら時間いっぱい、なんてことになるから急がなければいけない。
ダイビングの終盤、浮上する直前、残圧30。
ぷかぷかと漂う流れ藻にハナオコゼの幼魚たちがついているのが見える。
まるで不特定多数の雌の野良猫たちがじゃれあっているみたいに泳ぎまわっている。
流れ藻は水面を吹く風で沖へと押し流される。時間的に撮れる枚数は2枚。
これを逃せば、しばらくはハナオコゼの幼魚と出会うことはないだろう。
焦らずに、構図をきめて、光を考慮し、設定を間違えず、シャッターを押す。
そういった不安定で貴重な場面において、できるだけまともな写真を撮影できる技術を身につけること。
それがカステラカップ(阿部カップ)の真の狙いである。
僕はそれを聞いて、レスキューの講習中の写真撮影のことを思い出した。
レスキュー講習は誰にとっても、人生一度きりであり、そこに到達するには、これまで抱えてきたものをすべて使い切る必要がある。
そんな講習生の顔を撮影するというのは、ダイビングインストラクターを仕事にしている僕にとって大きな喜びのひとつである。
そこにある無神的とでもいうべき、空気の震えのようなものは初回の講習でしか味わえないからだ。
このカステラカップ(阿部カップ)は水中写真の猛者といえども優勝は簡単ではないらしい。
時間は限られているし、ハンデはあるし、ピントは合わせないといけないし、さらにはくじ運がないと勝てない。
腕のいい水中写真家というのは、「技術」「感性」「運」の三拍子が必要であるということなのだ。
しかし運ばかりにたよっていてもしょうがないので、せめて技術と感性くらいは日頃から磨いておこうというわけである。
プロとして、長年大自然を相手に撮影をしてきた阿部さんだからこそ、この考えにたどりついたんだとおもう。
悩みに悩んで、今回はこちらの3名を選ばせていただいた。
たつ、こな、あやか。
僕はこういうコンテストみたいな場面で、笑いをとろうなんて思う人間ではない。
サンライズ全体の実力を測る意味でも、真剣勝負に出るのは当然のことだ。
僕がこの3人を選んだ理由はこのふたつ。
◉もたもたしないこと。
もたもたされると僕の調子が狂う。
◉短時間でうまく撮れること。
こればっかりは誰もやったことがないので直感に頼った。
作戦はこうである。
被写体をみんなで一斉にみつける。
見つけたらあやかちゃんが撮影する。
その間にたつぼうとこなつがどう撮るかを考える。
たつ、こなに時間をかけて撮影してもらう。
時間があればそれをもう一周する。
自信の少ない、たつこなの焦りが少なくなるという算段である。
あやかちゃんは肝が据わっているけれど、技術に難あり。
たつこなは技術はいいけれど、肝に難あり。
僕たちは11時30分スタートだった。
僕は勝ちを確信していたので、あえてジョークを言うことにした。
しかし、この3名には一切のジョークが通用しなくなっていた。
彼らはいつしか臨戦体制に入っていたのだ。
ダイビングショップの車がずらりとならんでいた。
大型船と天気が僕らの味方してくれていた。僕はこのとき今一度、勝ちを確信した。
3人とも器材セッティングがめちゃめちゃ早かった。
僕がドベだった。
ポイント1の「イバラカンザシ」は10個体。
バラけて撮影できたので、6分撮って移動。
ポイント2の「クリアクリーナーシュリンプ」も全員分いた。(いない場合はサラサエビでも代用可であった)
こちらもバラけて撮れたので8分撮って移動。
ポイント3の「アリモウミウシ」は1匹しかいなかった。
なので先程の作戦通りに交代で撮る。10分間。
ポイント4の「トノサマダイの幼魚」は2匹いた。
サンゴに隠れるので、出てきたところを撮れる人が撮る。10分間。
ポイント5の「ミツボシクロスズメダイ」は2匹いた。
しかし撮影場所が狭いので、交代で撮る。10分間。
それ以外の時間は移動に使った。
途中すれ違ったふーチームみたいにのんびりしていない。
基本、ダッシュである。
上がってきたときのダイブタイムは47分だった。
結果からいうと、僕の予想通り、サンライズから優勝がでた。
しかしそれは僕のチームからではなく、ふーチームのちゃんまりであった。
こちらの写真がかなりの高得点を獲得し、結果的に優勝となった。
背景下部の黒抜きと赤のバランスがよく、ピントも完璧で、被写体の位置もいいとのこと。
撮影者が意図してそうなったのかわからない。
ただ、ちゃんまりとしての言い分としては、「この写真だけは自分で選びました!」とのことだった。
彼女なりにこれはよく撮れたと直感的にわかったのだろう。
何度みても、素晴らしい写真である。
こちらの写真もまあまあの得点をとっていた。
ピントもブレていないし、日の丸構図がちょうどいいからだろうとおもう。
これは一番点数が低い写真だった。
巻き上げた砂のつぶつぶが写っているし、色が浅く、ピントもずれている。
僕がおもう、ちゃんまりが日頃 撮る写真はこれである。
いつもであればゴミ写真を量産するちゃんまりが、今回に限り、阿部さんを驚嘆させる写真を撮ることができたのかはわからない。
運を味方につけたといえばそうなのだろうが、僕は正直、心からは喜べなかった。
深く考え込む余地のないコンテストは女性の方が向いているのかもしれない。
事実、2位は他ショップの女性だった。
そして、3位がこなつまる。
なかでも高得点を取ったのが、こちらのイバラカンザシ。
総合的によいとのことだった。二十点。
こちらも十七点とまあまあの得点。
こちらも同じく十七点。
こなつはどれを撮らせても平均的に写真がうまいということが証明できた。
志賀島で地道に培ってきた、頑健な実力がそうさせたのだ。
あとは、ここぞというときに出せる実力以上の実力。それに強運を兼ね備えればカメラの女王になれる日も近い、
と僕は勝手にそう思っている。
たちばなさんが意外な健闘をみせた。
五十五点。
ポイント4のトノサマダイの幼魚は綺麗に撮れていた。
構図も面白いし、ピントもきちんとあっている。
サンゴの中を出入りするむずかしい被写体で、これだけ撮れれば上等である。
僕が優勝を見込んでいたたつぼうは五十六点だった。
コンデジは九点のハンデがあったが、綺麗に撮れてあたりまえの一眼はハンデがない。
一番よく撮れていたと思ったクリアクリーナシュリンプは二十点。
コンデジだったら、それに三点プラスの二十六点であった。
たつぼうはじっくり粘って撮る家康タイプ。
この被写体ももっと粘れば芸術性の高い写真が撮れたとおもう。
こちらも同様、たつぼうの撮影スタイルでは時間が足りないのだ。
まあ、いたしかたあるまい。
新カメラで修練をするのみである。
こちらのカメラはフォーカスが速いらしいので、まさにうってつけであろう。
励め。
こなつに続く、カメラ女王の座をねらうまゆこんぐは五十九点。
このアオモウミウシの写真が二十点と高得点をとった。
しかし、残りの2枚が十五点前後とふるわなかった。
ムラがあるということは、まだまだ実力不足とみていいだろう。
写真を撮る理由が個人で違うため談話を掲載しておく。
以下、まゆこんぐ談。
サンライズ間でのやりとりはいつも通りな感じでおもしろかったです。
カステラカップは、理論に沿ったことをどれだけ当てはめれたかを点数化する様な感じで、勉強になる反面ワクワクする気持ちは想像より少なかったかなと思います。
だから理論的なものを勉強して、自分の中で膨らませるのが楽しさに繋がるから、セミナーは充実するのかなと思っています。
僕のチームで最下位だったのがあやかちゃんだった。
とはいえ、不慣れなTG-6での参戦であったにもかかわらず五十五点である。悪くない。
実際のところ、あやかちゃんの存在は写真の出来がどうこうというよりも、チーム全体に漂うマイナスの空気を中和させる役割を果たしてくれた。
たつこな→自信なし
RIO→文句と愚痴
なので、僕としては大いに助かった。
以下、あやか談。
被写体が自分から撮ることのないものばかりだったり、時間を制限されたり、普段と違う状況で写真を撮るのは新鮮で、楽しかったです。
コロナが落ち着いて、ツアーが復活するまでに、短時間で綺麗な写真が撮れるように練習したいなと思いました。
若干の狂いはあったものの、僕の予想通り、サンライズが優勝。予想外の3位をものにした。
恐悦至極に存じまする。
ちなみに、チーム優勝は山口のショップであった。
実を言うと、僕は昔からチーム優勝というものに、まるで興味がない。
最後に、僕がおもしろいと感じたことでしめようとおもう。
ひとつめは、写真を撮るという個人的な営みの中に、正反対の要素である団体性がみれたことだ。
チーム一丸となって作品を作り上げていく身のこなしは僕の心をうった。
全員野球ならぬ、全員写真である。
同じ釜のめしを食った仲間(ちょっと言い過ぎだけれども)に被写体のバトンを渡す姿を間近で見ていると、サンライズをやっていてよかったと思う瞬間でもあった。
そしてもうひとつ。
ガイドロープをたどりながら写真を撮っていると、まるでここが辰ノ口の海ではないような錯覚を覚えたことだ。
これは僕のクリエイティブスタイルに、合致する部分がある。
僕が何かを作るときに心がけていること、それは「日常にあるものが面白く、そして美しく見えること」である。
一本のロープでこれだけの変化を加えられるとは、目からうろこがごそっと落ちた気分であった。
そして、最後はこの天然伊勢海老味噌汁。
こいずみさんからの差し入れなのだが、まず間違いなくこれは愛する前田幸子店長へ向けたものであることは自明の理である。
僕が責任をもって取り分けた。
もちろん愛をもって。
阿部先生の写真採点とサイン会が長引いたため、懇親会は45分で切り上げた。
たつぼうは終始笑顔だった。ジョークは通じなかったけれど。
まあいつものことか。
そして、ふーみんはワイドレンズをつけたカメラを自在に操るため、このTG専用の「持ち手」を購入した。
僕はこの際なので、以前から欲しかった「外付けマクロレンズ」を購入した。
これで背景が綺麗にぼけやすくなる。
これをもって来年、熊本の海でダンゴウオを撮りまくる予定だ。
たちばなさんは「リングライト」を購入した。
たつぼうはおよそ100万円のカメラセットを購入した。
コンデジ関連の機材は、一眼カメラに比べて投資額は極めて低いので、いっちょ試してみるのも面白いとおもう。
そんなわけで、最後は告知。
きたる12月。
写真家あべひでき先生が来福されます。
別件で来られるため、日程は限られますが、サンライズの店内において、特別セミナーを開催してくださることになりました。
通常であれば、せんせいの出張費はこちらもちなのですが、別件でこられるとのことで、まけてくださいました。
初級編半日。中級編全日。
2日間行います。
かなり豪華です。
この深海に住むイワシ(だったかな)の干物くらい豪華です。
人数を制限しておりますので、カステラカップ参加者が優先となります。
空きが出次第、おって募集のご連絡をいたします。
しばしお待ちくださいませ。
サンライズ内の最下位であった大ちゃんは参加するように。
RIO