AM5:30福岡発
総勢10名のダイバーがハイエースとエスティマへと乗り込んだ。
前日の長崎と今回の鹿児島でハイエースの走行距離がついに27万キロをこえた。
夢の30万キロまで残り3万。
新車は金さえ払えば誰でも乗れるが、愛用品として車と向き合った人でないと30万キロの車には乗れない。(買おうにも中古車屋に売ってない)
一生に一度は、金では買えない車に乗ってみたいと思っていたので、これからも事故らないように頑張りたい。
スタッフ諸君も一層気を引き締めてもらいたいと願う。
行き先は、鹿児島県坊津。
なぜ我々は坊津へと向かうのか。
日が明ける前から、しかも日帰りで。
答えはとても簡単で「ラ・ボンバ鹿児島」の最後を見届けるためである。
サンライズとラ・ボンバさんとの付き合い自体はそれほど多くないし、長いわけではない。
しかし、店長個人はサンライズができる前からの付き合いがあり、キャサリン(元スタッフ)とも仲が良い。
オーナーインストラクターのとおるさんは、1988年に鹿児島に移り住み、ラ・ボンバ鹿児島を26年やってきた。
PADIコースディレクターであり、水中写真家であり、テックダイビングも教えていて、レックダイビングもやってきた、スキューバダイビングを極めたTHEインストラクターである。
(ちなみにだけど、僕は普通のインストラクター資格しか持たないし、水中写真は下手だし、テックダイビングもやらない。他人から見たら凡庸で退屈なインストラクター人生である。ほっといてくれ!)
明日70歳の誕生日だから今日で定年でーす!
バイクでのんびりツーリング旅をしたいでーす!と明るく話していた。
あまりにもあっけらかんとしていて、感慨深さのようなものは微塵も感じられなくてちょっと拍子抜け。
AM11:00出港
ラ・ボンバセミファイナルダイビングは港からわずか5分の場所。
ポイント名はジャッキーレックでーす!
マックス水深15mでーす!
クマノミがたくさんいまーす!
エビ探しまーす!
ボートのヘリにゴリラみたいに中腰になって喋る70歳見たことない。
引退が早い気がするのは僕だけじゃないと思う。
ここはヒグマが出てきそうな断崖絶壁に囲まれたところ。
いかにもあったかそうだなと思っていたら、実際水温は水面で27度近くあり、水底でも26度あった。
潜行してすぐに僕はとおるさんをマークした。
見せてくれるものを全部見せてもらう算段。
僕はそうやって物事を吸収する癖がある。
すぐに、「にの」と「てる」が一緒にマークを始めた。
周りからは、青フィンおじさんにんしゅうと呼ばれていたらしい。
「おじさん」という響きはさりげなく小馬鹿にできるため、サンライズの女子たちは必要以上におじさんという言葉を言いたがる。
基本的にサンライズの女子たちは性格がよろしくないのである。
大体からして、長く生きてきたらバカにされるということ自体意味わからない。
少なくともあなたたちよりは長く生きている分税金は多く払ってきたし、社会にも貢献してきたのだ。
僕にはその誇りを一抱え持っているので、顔のシミは取らないし、ウエットスーツに今の年齢を入れている。
「47」
(まあ、男性が50歳を過ぎると生物学的には生きている意味はないと昨今言われているので、バカにされても仕方がないのかもしれないけれど)
斑点が特徴的なイソギンチャクモエビ。
人数が多い上に、ダイビングの時間が短いため、さっと撮らないといけない。
なので写真のクオリティーは下がる。
カステラカップの技術をもっと習得せねばなるまい。
でなければ一生残るブログの写真が悲惨なことになってしまう。
オシャレカクレエビ。
砂と同化。
ヒトデヤドリエビ。
マンジュウヒトデにくっついているエビはとても可愛いが、僕はマンジュウヒトデの方が感動した。
ヤドカリ。
なんのヤドカリかはよくわからない。
同定しにくい生き物ランキング1位はカレイとヤドカリ。
2位はエビ。3位はカニ。4位はハゼ。
ウツボととおるさん。
これは普通のウツボ。
ウツボを見分けるのはとても簡単。
ジャッキーレック。
魚礁??
水深15m。
ここには囚われたトラウツボがいた。
ウツボは北部九州にはあまりいないのでとっても新鮮。
突然あらわれる尖った岩。
突き出た岩の周りを回るイッサキ。
どこのイサキも共通して、突き出たところが好きなのだ。
唐津にいたら驚かれるウミスズメはその辺を散歩していた。
ホヤ。
光にあたってキラキラしていた。
ひかるように設計されたのはなぜなんだろう。
キャベツのようなシコロサンゴ。
坊津のサンゴは綺麗に残っていて、手付かず感がある。
美味しそうでもある。
サンゴに隠れるダルマハゼ。
これも撮るの難しい。
安全停止。
一度港に戻り、カツオ(昼ごはん)に食らいついたら、いよいよ本当のラストダイブ。
まさか、ラストダイブがサンライズとはまさに人生一期一会である。
この日を狙ったわけではなくて、たまたまこの日しか空いてなかったのだ。
ここはリエちゃん岩と言いまーす!
リエちゃんは結婚して福岡にいるんじゃないかな〜!
ニシキフウライウオとカエルアンコウがいまーす!
洞窟にも入りまーす!
みなさんエンリッチタンクなので減圧症は心配ないと思いまーす!
とおるさんは、やっぱり僕が最初に会った時からそれほど変わっていない。
リエちゃん岩はさっき潜ったジャッキーレックとそう離れていないのだが透明度がグッと上がっていた。
ラストダイブスタートは、まゆこんぐとちゃんまりが夜鍋して作ったフラッグで記念撮影。
とおるさん似てるww
ウツボ、ピグミーシーホース、ネジリンボウハゼ、キンギョハナダイ、そしてキャサリンという豪華フラッグ。
GOOD!!
しっかり結んで、ダイビングスタート。
まずはガラスハゼ。
ガラスハゼの卵、初めて見た。
いきなりレアもの。
ニシキフウライウオの登場。
この魚は「ゴーストパイプフィッシュ」と言って、外国でも大変人気な魚。
みなさんあまり綺麗に撮れてないので、カステラカップで修行してください。
続いてピグミーシーホース。
世界最小のオトシゴさん。
可愛いし、美しいし、神々しい。
水深25m。
岩の奥に広がる洞窟。
鍾乳洞というよりは、宮殿に入っていく気分。
木漏れ日がもれる。
踊り子アカマツカサが群れる。
近衛兵ワニゴチが身を休める。
この宮殿は最低10分は居たかった。
とても綺麗だった。
洞窟を抜けるとカエルアンコウ。
色といい、形といい、サイズといい、完璧なフォルム。
岩に突き出た枝にくっついていたので、背景が真っ青でコントラストがめちゃくちゃ美しい。
しっかり一眼で撮ればかなり美しい写真が撮れるに違いないが、大人数、短時間撮影ではこれが精一杯。
隣にはオキゴンベ。
やや深いところを好む、浮袋のない魚。
知っていたら達人級。
40分のダイビングだけど、まだ終わらない。
上がる前に、ダイバーをほとんど入れてこなかった「サンククチュアリ」に連れて行ってくれた。
柏島に引けをとらない美しい珊瑚の階段。
写真ではわかりずらいが、キンギョハナダイが風に吹かれた花びらのように舞い上がる。
珊瑚の隙間にはワカウツボ。
坊津の番人たちに一人づつ挨拶しているような気分。
全てが完璧で全てが心地よかった。
時間という概念が打ち崩され、あれよあれよと走馬灯のように美しく過ぎ去っていった。
いつまでもここに潜っていたいと思ったのは何年ぶりだろうか。
(全体的に写真が下手であまり伝わりにくかったかもしれないが。。)
僕の25年にわたるダイビング人生の中でもトップ5に入るダイビングだった。
坊津でのダイビング、いや、鹿児島県のダイビングの中ではダントツの1位だったし、今年のダイビングの中でも間違いなく一位確定である。
とおるさんが全部出し切ってくれたおかげだと思うけど。
このダイビングに参加していなかった人はまじでアホだと思う。
こういうダイビングはパラオに行ったからといって、モルディブに行ったからといって、プーケットに行ったからといって、宮古島に行ったからといって、味わえるわけではない。
金を出せば透明度のいい海には潜れるが、運がなければ最高のダイビングには立ち会えない。
最高の運を使い、最高の日程で組んだ坊津ツアー。
日帰りだったからサンライズに来ている人たち全員に味わってもらいたかった。
有給をとってでもくるべきだったと思うよ。
ほんと残念。
とおるさんが船を降りる前に店長がさっと船から降り、機敏に花束を持ってきた。
めっちゃいい写真。
この花束は店長が前日長崎ダイビングから帰りついたあと、深夜まで空いている花屋に行って買ってきたもの。
とおるさんは美大出身なので喜んでくれたようです。
家に飾ってくれてました。
こちらのケーキはラボンバのお客さんが買ってきたもの。
フルーツしか食べませーん!
お誕生日と定年をダブルで祝うのでみんなで食べます。
ごちそうさまでした。
三宅美術館特別企画展「安藤徹写真展 藍の刻」―写真で巡る海中遺跡と豊かな自然―
とおるさんが撮影したチューク諸島の沈船の写真集もいただきました。
一人づつサインもしてくれました。
何もかもが楽しすぎる1日。
また会う日まで。
ラボンバさんに別れを告げ、お土産のカツオを買いに枕崎お魚センターへ。
枕崎のおばちゃんはとっても親切。
帰りは知覧茶の茶畑を見て、
朝顔が「なんか懐かしい匂いがする〜」と言ってました。
小雨。
目の前にでっかい虹が出てました。
遊園地にありそうなお花のゲートのような虹。
僕たちはその虹をくぐりました。
さよなら。
RIO