素潜りを教えているとどうしても避けられない問題があります。
それは耳抜きです。
耳抜きというのは水圧で鼓膜をやぶらないようにするために鼻をつまんでぷっと耳の奥に息を送り込む動作のことです。
耳抜きは首やあごの骨格的影響にくわえ、気管支にまつわる体調のことも考慮しておかなけばなりません。
ですから5ccほどの唾液を飲むだけで抜ける人がいる一方、首筋をどれだけ伸ばして息を送り続けても抜けない人もいます。
僕は左奥に生えていた親知らずを抜いた直後から右耳が抜けにくくなりました。
左右の噛み合わせバランスが変わって右の耳管がせばまってしまったと思われます。
僕はそれ以来あごを左にずらしながら耳を抜くようにしています。
ではシーソー的発想で右の親知らずを抜けばなおるのか。
さてどうでしょうね。
僕はそういう奇特な実験をやったことがある人に話を聞いたことがないですし、実験を記した論文を読んだことがないのでなんとも言えませんが、
あまりいい結果を生むとは思えません。
なぜなら今やっている耳抜きの方法にすっかり慣れてしまっているからです。体もそれに合わせてどんどん変化していきます。
変化して変化して変化した先にいい結果があるなんて思えますか。
おおかたよくない方向に行くんじゃないかなと思います。
でも僕は運がいいほうなので、いい結果になる可能性は十分にあります。
しかしながら僕には生まれつき右の奥に親知らずが生えていません。だからその実験は不可能です。
僕は今のところ右が抜けにくいままダイビングの世界で生きていくことになります。
ダイビングの一般常識的に風邪をひいていたり鼻炎だったりすると誰でも抜けにくくなります。
でもまったく影響がない人もいます。どんなに鼻がぐすぐずいっていてもちょっと耳を動かせば抜ける人がいます。
それがなんでなのかはわかりません。
人間の体はとにかく複雑怪奇なんだとしかいいようがありません。
しかしそういう人でもたまには抜けなくなることもあります。
そういう場合は潜水深度2.5mくらいまでにしておけば大丈夫です。
鼓膜は餃子の皮みたいにやわらかいのでそのくらいの深度であれば問題ありません。
遺伝的にちょっと問題がある人でも、僕の個人的な感覚で言わせてもらいますと、こつこつ練習すれば誰でもぬけるようになります。
こつこつ練習というのは無理のない範囲でちょこちょこ潜ることを指します。
3ヶ月くらい真面目に練習すれば生まれつきだめなのかどうかはっきりしてきます。
素潜りの場合ヘッドファーストで入るわけですから、6ヶ月くらいは練習した方がいいと思います。
そこまでやってだめなら、あきらめてゴルファーかランナーに転向しましょう。
夏になるとこんなお客さんが来店されます。
どこそこの島で体験ダイビングをやりました。ライセンスを取りました。でも耳抜きが苦手でした。何回やっても抜けませんでした。
そういうお客さんを前にしますと、こんな光景が目にうかぶ。
髪の色を脱色して島ぞうりを履いたあほズラのインストラクターが無理に1オクターブあげたよそいきの声で、耳をつまんでぷっとすると抜けます、唾を飲めばぬけます、と連呼する。
ダイビングが終わると耳が抜けないお客さん連れて大衆居酒屋に入り、泡盛やら特産ワインやらをすすめて嫌な思い出を綺麗さっぱり酒の力で忘れてもらおうと死力を尽くす。
いや〜まじ大変だったけど、クマノミ見れてよかったすねえ〜〜。かんぱ〜〜い。
いぇ〜〜〜い。今度またきてくださいよ。
云々カンヌン。
耳がぬけなかった人はとうぜんだけど明日も抜けない。明後日もぬけない。なぜ抜けないのかはわからない。だって教えてくれないから。
なんとなく講習を終えて飛行機に乗る。耳が抜けなかったことが頭のすみに残る。
行動力とやる気がある人はダイビングに再チャレンジするけれど、耳に不安が残った人のほどんどがダイビングから遠ざかる。
そういう人たちはダイビング=怖いという印象を人々に与え続ける。
耳抜きというのはダイビング教材上に一般的なことしか書いていないため、ダイビングインストラクターのもっともおしえずらいセクションのひとつです。
インストラクターというのは生来、いい加減に生きてきた人の成れの果てですからダイビングと関係ない分野の書籍を読み漁って新しく勉強しなすなんてことは夢のまた夢。
おっと、あぶない。人の悪口書きすぎますと、みんなから嫌われてライ麦畑のホールデンくんみたいになってしまいます。
老後に孤独な人生を歩みそうなのでこのへんでやめときます。
では最後にもう一度これだけ言っておきます。
耳抜きというのは練習を積みかさねればほとんどの人ができるようになるんです。
そうなるまでに耳を痛めないような適切なトレーニングをすればいいわけです。
がんばりましょう。
長くなってきたのでこのへんでブログに入ります。
これ以上書きますと、なおたろうさんが読んでくれなくなります。
この写真の僕は威圧感がすごいです。
なんてたってなおたろうに読んでもらうために書いているところもあるわけですから。このブログは。
素潜り基礎コースの初日はスタティックを中心にすすめていきます。
つまりは瞑想とストレスを勉強します。
このスーツを着ればS気質の人であってもM気質。
しかし瞑想においてそんな些細なことは気にしてはいけません。
こちらは巨人軍。ユニフォーム風ウエットスーツです。
スタティック(息止め)はプールでやります。
ぺヤングさんは3分23秒も息をとめることができました。
それもこれも瞑想と呼吸法のおかげです。
水深は3.5mのプールで耳抜きの練習もしました。
真面目です。
次回は海です。
RIO