僕が初めてとおるさんに会ったのは30歳半ばをすぎた頃だった。
海から上がって冷えていたから季節は春だったと思う。
とおるさんは迎え入れる時、見送る時、潜っている時、笑顔を顔に貼り付けていた。
それが本当の笑顔だったのか、推しはかる余地はない。
けれども坊津という場所はニコニコがついてまわり、福岡に着くまでついてまわる。
そのニコニコはなんらかの形で坊津を形作る要素の一つになっている。
だから、やめるなんて思いもしなかった。
だから、というのは一部おかしいかもしれない。
いや、おかしいということにして間違いはないんだと思う。
けれどもやっぱりやめるということを思い浮かべられないことに変わりはない。
とおるさんは永遠のおじさんであるわけだし、永遠に坊津の人なことに変わりはないからだ。
これで一つの時代が終わると思っている。
時代というと大袈裟かもしれないけれども、えいさえいさとダイビングを引っ張ってきたおじさんがここで別れを告げるのだ。
これって、新しい幕開け?それとも幕引き。
僕にはそんなことさっぱりわからない。
一つわかっているとしたら、ダイビングはいつまでもできるものではないということだ。
本当はわかってる。
僕らは今、そんな時代には生きてはいない。
めぐりめぐりめぐりめぐっているのだ。
かわりかわりかわりあっているのだ。
こねくりまわされひっかきまわされからめとられようとしている。
僕はそんな時代にあっても絶対に後悔がないように生きたい。
海に感謝したい。
それだけの話。
告知
2024年10月27日
坊津のダイビングショップはこの日幕を閉じます。
最後の日は一緒に潜って何かを感じに行きたいと思っています。
こういう日に立ち会えるのは貴重なこと。
ぜひ、参加してください。