今回、生態観察&フォト講習の舞台となったのは福岡から車でおよそ350km、九州百名山の「金峰山」や、日本三大砂丘の「吹上浜」など、様々な自然が織りなす景色富む地域、南さつま笠沙にある【大当海岸】。

この笠沙エリアが近年ダイビングポイントとして有名になったのは、今回利用した現地ダイビングサービスさんのおかげだと言っても過言ではないと思う。今回お世話になったショップさんの今回のようなコアな生態観察ダイブがSNSを通して一気に日本中に広がり、最近は関東からフォト派のダイバーが急激に増えたそう。
黒潮の影響をもろに受ける枕崎~千貫瀬エリアとは違い、個人的にはこのエリアは温帯性の魚と亜熱帯の魚が入り混じった、屋久島に近い不思議な生態を持った興味深い海だと感じています。
2:00 起床
その1時間後には船上で満月と満点の星を拝む。

大潮から中潮への潮回りのこの日、明け方のわずか数時間だけ、数億年前から変わらずに現在も行われている生態が観察できるということで、それを見ようと、睡眠時間を大幅に削って海にやってきた。

この日、この時間、この場所で『サオトメシコロサンゴ』の放精抱卵が観察できます。
4:00
先に入った現地ガイドの方の水中ライトが点灯したら潜降の合図。

エントリーしたら各自自由に観察と撮影の開始。

ちなみにこちらが放精産卵をしていないサオトメシコロサンゴで、この日放精も抱卵もしないサンゴは翌日に行うんだそう。

ここ大当海岸では80%がシコロサンゴで、残りの20%近くがこのサオトメシコロサンゴ。
事前の説明ではそんなに多くが放精抱卵しないかと思っていたのですが、、、エントリーするとすぐにいたるところで放精と抱卵が始まり驚きました。

そして注意深く観察すると、ふんわり煙のような精子を放出するオスの個体と、

つぶつぶの小さな卵を放出するメスの個体があることが確認できました。

ちなみにこちらのサンゴは性転換もするそうで、去年放精していた個体が今年は抱卵していて驚かされることがあったそう。
いつでも潜れるホームグラウンドの海があると、色んな気づきがあり、いつものダイビングがより奥深いものになっていくんですよね。
真っ暗な水中がどんどんどんどん白濁していく。

数十分もするとあたり一面、白い煙で覆われました。

この景観はなんともいえない幻想的な世界に思えました。

時間の概念なんて持たない生物が、真っ暗な海の中で示し合わせたように決まった時間に放精と抱卵を何十億年前から繰り返しているんです。
なんだかすごく神秘的な気もしますが、女性の体に月の満ち欠けと同じようにごく普通に月経がやってくるのと何ら変わりがないことなのでしょう。
ごく自然な当たり前なことなんだけど、こうしてその瞬間に立ち会えたことにとても嬉しく思いました。
現地スタッフの方の日々の努力が、こうやって実を結ぶのに随分と長い歳月を要したことは安易に想像できます。
エキジットするとほんのり東の空が明るく、控えめに言っても最高の朝を迎えました。

6:40 早朝ダイビング
すっかり日も登り、早朝ダイブは『イシヨウジ』の繁殖行動を狙う今回のフォト合宿ラストダイブ。

連日お天気にも海況にも恵まれました。

不思議と睡魔は襲ってきませんでした。

一面のシコロサンゴ。

これだけの数のシコロサンゴが放精と産卵を行うなると、あたり一面どうなるのか?是非今度はシコロサンゴの放精産卵にも立ち会ってみたいと感じました。
数時間前にあんなに水中を白濁させたサオトメシコロサンゴは、平然といつもの姿に。

繁殖行動が行われる時間も場所も熟知している現地ガイドのおかげでお目当てのイシヨウジのペアはすぐに見つかりました。
イシヨウジはタツノオトシゴと同じく厳格な一夫一妻で、毎朝同じ場所でスキンシップをはかるのです。
ただスキンシップで終わる朝もあれば、オスが婚姻色を出し、そのまま繁殖行動につながる日もある。
今日はどうだろう。
軽く見積もっても1台100万円以上はする巨大なカメラを持った大勢のダイバーが一斉に小さなイシヨウジを囲います。

ダイバーと一言で言っても、これはリゾートでマンタを見て『イエーイ』ウミガメを見て『イエーイ』と、可愛いビキニ姿でインスタ360で自撮りしているダイバーと本質が全く違っています。

こちらの面々は白衣を着て顕微鏡を覗いている研究者に近いものを感じます。
そんな一眼勢の圧に負けたまゆこんぐは早々に撮影断念。

そんなことじゃいい写真なんていつまで経っても撮れないよ。いつもみたいに図々しくあれ!
ウミウシのほうがいいコンバット。

膝の調子が悪い阿部さんはフィンがうまく使えないので、立って見るスタイル。

約90分のダイビングで2ペアの繁殖行動を観察、撮影することができました。

オスの首元にあらわれるブルーのリングは婚姻色。

立ち上がりオスのお腹の育児嚢に卵を産み付けるメス。

一瞬の出来事のあと、産み付けた卵が剥がれて通りすがりのスズメダイに食べられてしまわないようしっかりと体をくねらせて押し付けるメス。

こちらのペアには途中別のメスの乱入がありましたが、事なきを得ました。

静かな朝、日課の挨拶から始まり愛を誓いあうイシヨウジたちの愛の流儀、こちらも素晴らしい瞬間に立ちあえました。
嬉しい小夏。

貴重な瞬間に立ち会え、充実のダイビングを味わいました。

阿部さんのカメラも見させてもらいました。

貴重な体験。

簡易ベッドと車内と店内の空いたスペースでしばし仮眠。

12:00~17:00
阿部先生のフォトセミナー、前日の続きがスタートしました。

今回の参加者で一番ベテランのたっちゃんは阿部さんからこんなアドバイスをもらっていました。

先に形を決めずに、もっと大胆に柔軟性を持って、自身の知識にに固執したり、過去の成功事例にとらわれ過ぎないことが新たな写真表現の創造や新事実の発見につながるのだと。

『Be water, my frirnd. 友よ、水になれ!』と。
生態観察もフォトセミナーも控えめに言っても、これまた最高な時間。

今回のダイビングでは4本すべて同じポイントに入りましたが、すべて観察するものも違うし、見たかった生物のすべての瞬間に立ち会え、全く飽きることのない有意義なダイビングとなったのは、オーナーの松田さんが何年もかけて毎日海に出て調査を続けたこと、生態観察のプロでもある一流の水中写真家の阿部さんと海に入れたこと、ルールを守って丁寧に生態観察をするスキルを持った幸運な仲間たちと一緒に海に入れたことで、全てがうまくいきました。
ありがとうございました。
前田幸子
8/30(日)
潜水場所:鹿児島/南さつま大当海岸
潜水時間:75分+85分
最大深度:12.6m
透視度:20m
水温:28~29℃


